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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)5752号 判決

甲事件原告

ワールド・トランス有限会社

ほか二名

被告

三紀運輸株式会社

ほか三名

乙事件原告

株式会社三紀ライン

被告

ワールド・トランス有限会社

ほか一名

主文

一  甲事件被告三紀運輸株式会社及び同安部高は、甲事件原告木下紀之に対し、連帯して金六二一六円及びこれに対する平成一一年二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  甲事件被告株式会社ナンコーエキスプレス及び同坂根洋一は、甲事件原告木下紀之に対し、連帯して金一五五四円及びこれに対する平成一一年二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  甲事件被告三紀運輸株式会社及び同安部高は、甲事件原告ワールド・トランス有限会社に対し、連帯して金一四三万九八四三円及び内金一三九万九八四三円に対する平成一一年二月四日から、内金四万円に対する平成一一年六月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  甲事件被告株式会社ナンコーエキスプレス及び同坂根洋一は、甲事件原告ワールド・トランス有限会社に対し、連帯して金三五万九九六〇円及び内金三四万九九六〇円に対する平成一一年二月四日から、内金一万円に対する平成一一年六月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  甲事件被告三紀運輸株式会社及び同安部高は、甲事件原告安田火災海上保険株式会社に対し、連帯して金八万〇五八四円及びこれに対する平成一一年四月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  甲事件被告株式会社ナンコーエキスプレス及び同坂根洋一は、甲事件原告安田火災海上保険株式会社に対し、連帯して金二万〇一四六円及びこれに対する平成一一年四月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  乙事件被告らは、乙事件原告に対し、連帯して金二二万一〇七五円及び内金二一万一〇七五円に対する平成一一年二月四日から、内金一万円に対する乙事件被告ワールド・トランス有限会社については平成一一年一〇月二〇日から、乙事件被告木下紀之については平成一一年一〇月二一日から、支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

八  甲事件原告ら及び乙事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。

九  訴訟費用は、甲事件・乙事件を通じ、これを一〇分し、その七を甲事件原告兼乙事件被告ワールド・トランス有限会社、同木下紀之及び甲事件原告安田火災海上保険株式会社の負担とし、その二を甲事件被告三紀運輸株式会社、同安部高及び乙事件原告株式会社三紀ラインの負担とし、その余を甲事件被告株式会社ナンコーエキスプレス及び同坂根洋一の負担とする。

一〇  この判決は、第一項ないし第七項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  甲事件

1  甲事件被告らは、甲事件原告木下紀之に対し、連帯して金一万五五四〇円及びこれに対する平成一一年二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  甲事件被告らは、甲事件原告ワールド・トランス有限会社に対し、連帯して金七三二万七〇一三円及びこれに対する平成一一年二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  甲事件被告らは、甲事件原告安田火災海上保険株式会社に対し、連帯して金二〇万一四六一円及びこれに対する平成一一年四月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  乙事件

乙事件被告らは、乙事件原告に対し、連帯して金六二万八〇四六円及び内金五六万八〇四六円に対する平成一一年二月四日から、内金六万円に対する乙事件被告ワールド・トランス有限会社については平成一一年一〇月二〇日から、乙事件被告木下紀之については平成一一年一〇月二一日から、支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、道路上での多重衝突事故に関し、事故車両関係者間において損害賠償等が請求された事案である。

一  争いのない事実等(証拠等により比較的容易に認められる事実を含む)

1  事故の発生

左記事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

日時 平成一一年二月四日午前八時四五分頃

場所 山口県美祢郡美東町大字真名中国縦貫自動車道下り四八六・三キロポスト先路上(以下「本件事故現場」という。)

事故車両一 大型貨物自動車(大阪一一え八五六二)(以下「三紀車両」という。)

右運転者 甲事件被告安部高(以下「安部」という。)

右所有者 乙事件原告株式会社三紀ライン(以下「三紀ライン」という。)

事故車両二 普通貨物自動車(和泉一二あ八七一)(以下「ワールドトランス車両」という。)

右運転者 甲事件原告兼乙事件被告木下紀之(以下「木下」という。)

右所有者 甲事件原告兼乙事件被告ワールド・トランス有限会社(以下「ワールドトランス」という。)

事故車両三 大型貨物自動車(佐賀一一き五〇五二)(以下「ナンコー車両」という。)

右運転者 甲事件被告坂根洋一(以下「坂根」という。)

態様 〈1〉 第一車線から第二車線をまたぐ形で進路変更した三紀車両と第二車線を走行してきたワールドトランス車両とが衝突した。

〈2〉 ワールドトランス車両は中央分離帯に衝突した。

〈3〉 跳ね返ったワールドトランス車両に後続のナンコー車両が追突した。

〈4〉 ワールドトランス車両は再度中央分離帯に衝突した。

2  甲事件被告三紀運輸株式会社の責任原因

安部は、甲事件被告三紀運輸株式会社(以下「三紀運輸」という。)の従業員であり、本件事故は三紀運輸の事業の執行中に発生したものである。

3  甲事件被告株式会社ナンコーエキスプレスの責任原因

安部は、甲事件被告株式会社ナンコーエキスプレス(以下「ナンコー」という。)の従業員であり、本件事故はナンコーの事業の執行中に発生したものである。

4  ワールドトランスの責任原因

木下は、ワールドトランスの従業員であり、本件事故はワールドトランスの事業の執行中に発生したものである。

5  日本道路公団に生じた損害

日本道路公団は、ワールドトランス車両が中央分離帯に衝突した結果、三〇万一四六一円の損害を被った(甲八1ないし4)。

6  甲事件原告安田火災海上保険株式会社の保険代位(日本道路公団に生じた損害について)

(一) 甲事件原告安田火災海上保険株式会社(以下「安田火災」という。)は、本件事故当時、ワールドトランスとの間で、自動車保険契約を締結していた。

(二) 安田火災は、平成一一年四月二八日、右自動車保険契約に基づき、本件事故によって日本道路公団に生じた損害につき、同公団に二〇万一四六一円を支払った。

7  ワールドトランスの求償権の取得(日本道路公団に生じた損害について)

ワールドトランスは、平成一一年六月三日、本件事故によって日本道路公団に生じた損害につき、同公団に一〇万円を支払った。

二  争点(一部争いのない事実等を含む)

1  本件事故の態様(安部の過失、坂根の過失、木下の過失、共同不法行為の成否)

(甲事件原告らの主張)

安部は、車線変更するに際し、左右及び後方を注意して車線変更しようとする車線を走行する自動車等の有無及びその安全を確認してから車線変更を開始すべき注意義務があるにもかかわらず、自らの走行する車線前方の車両のみに注意を奪われ、車線変更しようとする第二車線を走行する自動車等の有無及びその安全を確認しなかったため、その存在に気づかないまま漫然と第二車線への車線変更を開始した過失がある。

三紀車両は、ウインカーを出すと同時に車線変更を開始し、その時点における同車両とワールドトランス車両との車間距離は約一〇メートル強しかなかった。右時点におけるワールドトランス車両の速度は、時速四〇ないし五〇キロメートルである(三紀車両の速度は時速約三〇キロメートルであった。)。このような状況で木下が三紀車両との衝突を回避することは不可能であり、木下には過失はない。

坂根は、同一車線前方を進行する車両との車間距離を十分取った上で走行すべき注意義務があるにもかかわらず、また、同一車線前方を進行する車両が何らかの原因で急に停車ないし減速した場合には適切なハンドル及びブレーキ操作により、右車両と衝突ないし接触することを回避すべき注意義務があるにもかかわらず、自車前方を走行するワールドトランス車両との車間距離を十分に取らず、また、右車両が停止ないし減速したにもかかわらず適切なハンドル及びブレーキ操作を怠ったという過失がある。

安部及び坂根の加害行為は、時間的・場所的に極めて接近し、客観的に関連共同しているものであり、共同不法行為というべきである。

(三紀運輸、三紀ライン及び安部の主張)

安部は、三紀車両を運転し、時速五〇キロメートルで第一車線を走行していたところ、前方に第一車線にはみ出して停止している故障車を発見した。これを避けるため、右サイドミラーで後方を確認し、後方三六メートルを走行中のワールドトランス車両を発見したが、車間距離が十分あるものと考え、車線境界線をまたぐ形で進路変更し、そのまま直進していたところ、ワールドトランス車両が時速八〇キロメートル(制限速度五〇キロメートル)で走行していたため、これに追突された。右事故は、木下が、減速する等の処置を採らず、速度超過のまま三紀車両の右側を通り過ぎようとし、ハンドル操作を誤り、ワールドトランス車両の左前部を三紀車両の右後角に追突させたというものであり、同人の過失により生じたものであることは明らかである。仮に安部に過失があるとしてもごくわずかなものにとどまる。

ワールドトランス車両と三紀車両との衝突事故、ワールドトランス車両とナンコー車両との衝突事故は、別事故であり、共同不法行為の関係には立たない。

ワールドトランス車両が三紀車両に追突した後、中央分離帯へ衝突したのは、木下の回避不適切によるものである。したがって、ワールドトランス車両の中央分離帯への衝突事故、ナンコー車両との衝突事故は、安部の過失によるものではない。

(ナンコー及び坂根の主張)

ワールドトランス車両と三紀車両との衝突事故、ワールドトランス車両とナンコー車両との衝突事故は、別事故であり、共同不法行為の関係には立たない。

坂根は、時速約六〇キロメートルでナンコー車両を運転し、ワールドトランス車両との間に十分な車間距離を取っていたものの、約六〇メートル前方にワールドトランス車両が第二車線上で中央分離帯に対して約七〇度の角度で停止しているのを発見し、急ブレーキをかけるとともに、左前方には三紀車両があったため、大きく左に転把することはできず、やや左にハンドルを切って回避しようとしたが間に合わず、ワールドトランス車両の開いていたウイングの左角とナンコー車両の右側部とが接触したものである。接触による衝撃はほとんどなかった。したがって、坂根には過失はなく、仮に坂根に過失があるとしても無いに等しいほどの僅少なものであり、しかもナンコー及び坂根は、ワールドトランス車両とナンコー車両との衝突事故により発生した損害に対して責任を負うにとどまる。そして、後記のとおり、ワールドトランス車両は、ナンコー車両が衝突する前に既に全損となっていたものである。同様に木下の損害もナンコー車両が衝突する前に発生していたものである。

2  木下の損害

(木下の主張)

治療費 一万五五四〇円

よって、木下は、三紀運輸、安部、ナンコー及び坂根に対し、連帯して右損害額一万五五四〇円に対する本件事故日(平成一一年二月四日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める。

(三紀運輸及び安部の主張)

不知ないし争う。三紀車両とワールドトランス車両との衝突事故は、人身事故としては扱われておらず、木下に人身損害が発生したかどうかには疑問がある。仮にこれが発生したとしても、三紀車両との衝突によるものではない。

(ナンコー及び坂根の主張)

不知ないし争う。木下の損害は、ワールドトランス車両にナンコー車両が衝突する前に発生していたものである。

3  ワールドトランスの損害等

(ワールドトランスの主張)

(一) 修理費 四六九万三一六四円

(二) レッカー代 一五万六九二三円

(三) 積荷損害 一三万九一三六円

(四) 検品手間代 三万七八〇〇円

(五) 不良品引取運賃 一万五七五〇円

(六) 休車損害 二一八万四二四〇円

(七) 日本道路公団に対する支払 一〇万円

よって、ワールドトランスは、三紀運輸、安部、ナンコー及び坂根に対し、連帯して右損害等の合計額七三二万七〇一三円及びこれに対する本件事故日(平成一一年二月四日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める。

(三紀運輸及び安部の主張)

不知ないし争う。

ワールドトランス車両は本件事故によって経済的全損となったものであるから、車両損害額は時価額たる二七五万円を上回ることはない。また、その損害のほとんどは三紀車両との衝突後に生じたものである。

レッカー代、積荷損害が生じたとしても、それは三紀車両との衝突後に生じたものである。また、積荷の積載の有無自体も不明である。

休車損害については売上から経費を控除すべきである。なお、経費としては、高速代、燃料代の外にも、人件費、修理代、通行料、保険料等もあるはずである。休車期間は三〇日もあれば十分である。

日本道路公団に生じた損害は、木下の回避不適切の過失によるものである。

(ナンコー及び坂根の主張)

不知ないし争う。

ワールドトランス車両は、ナンコー車両が衝突する前に既に全損となっていたものである。すなわち、ワールドトランス車両の損傷は、左右とも前部からの入力によるものがほとんどであり、左側は三紀車両との衝突により、右側は三紀車両との衝突直後中央分離帯に衝突したことにより、それぞれ損傷したものであり、この時点で時価額を上回る全損となったものである。

4  三紀ラインの損害

(三紀ラインの主張)

(一) 修理費 三一万八一五〇円

(二) 休車損害 二四万九八九六円

(三) 弁護士費用 六万円

よって、三紀ラインは、ワールドトランス及び木下に対し、連帯して右損害合計額六二万八〇四六円及び内金五六万八〇四六円(右(一)及び(二)の合計額)に対する本件事故日(平成一一年二月四日)から、内金六万円に対する訴状送達日の翌日(ワールドトランスについては平成一一年一〇月二〇日、木下については平成一一年一〇月二一日)から、支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める。

(ワールドトランス及び木下の主張)

不知ないし争う。

第三争点等に対する判断(一部争いのない事実を含む)

一  争点1について(本件事故の態様)

1  前記争いのない事実、証拠(甲一1、2、一二、一四1、一五1ないし3、乙一、四1ないし23、七1ないし4、丙二、四、木下、安部、坂根)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、山口県美祢郡美東町大字真名中国縦貫自動車道下り四八六・三キロポスト先路上である。本件事故現場を通る道路(以下「本件道路」という。)は、片側二車線で中央分離帯によって上下線に区分され、本件事故現場付近の下り線は緩やかな下り坂で大きく右にカーブしているが、下り坂になっているので前方の見通しはよい。本件事故当時の路面は、湿った雪による五ないし一〇センチメートル程度の積雪状態であった。そのため、最高速度は時速五〇キロメートルに規制されていた。

安部は、平成一一年二月四日午前八時四五分頃、三紀車両を運転し、時速五〇キロメートルで第一車線を走行していたところ、前方に第一車線にはみ出して停止している故障車を発見した。これを避けるため、ウインカーを出しながら右側タイヤが第二車線にはみだすくらいの形で進路変更し、そのままの状態で進んだ。同じ頃、木下は、ワールドトランス車両を運転し、本件道路下り線の第二車線を時速約七〇ないし八〇キロメートルで走行して本件事故現場付近にさしかかったところ、相当前方の車両が右ウインカーを出しながら右に寄り始めたのが見え、左前方をワールドトランス車両よりも遅い速度で走行していた三紀車両も右ウインカーを出して進路変更してきたので、急ブレーキをかけたが間に合わず、ワールドトランス車両の運転席左前部及び荷台左前部が三紀車両の右後角に衝突し、その衝撃でワールドトランス車両の荷台が後方に押し出された形になり、ウイングが横に開いてしまった。右衝突時の三紀車両の姿勢は、車線に並行している状態であった。

右衝突後、ワールドトランス車両は、中央分離帯へ衝突し、跳ね返って中央分離帯に対して後部を左に降った形で第二車線上に停止した。

同じ頃、坂根は、ナンコー車両を運転し、六〇メートル以上の車間距離をあけ、時速約六〇キロメートルで第二車線上をワールドトランス車両の後ろで追走していたが、右カーブを抜けた後、約六〇メートル前方にワールドトランス車両が第二車線上で停止し、その手前の第一車線上には三紀車両がいるのを発見し、急ブレーキをかけるとともに、やや左にハンドルを切ってこれらとの衝突を回避しようとしたが間に合わず、ワールドトランス車両の開いていた左ウイングの後部とナンコー車両の右サイドミラーその他右側部とが接触した。

その後、ワールドトランス車両は、再度、中央分離帯へ衝突し、跳ね返って第二車線上に停止した。

以上のとおり認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右認定事実によれば、三紀車両とワールドトランス車両の衝突は、安部が進路変更するに際し、左後(ママ)方を注意して進路変更を開始すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠ったという過失と木下が進路前方の様子に注意して適宜減速等の措置を講ずるべきであったにもかかわらず、これを怠ったという過失とが競合して起きたものと認められる。右衝突に関する安部と木下の過失割合は五対五の関係にあるとするのが相当である。

また、ワールドトランス車両とナンコー車両との衝突は、木下が前記の次第でワールドトランス車両を第二車線上に停止させる事態を招いてしまったという過失と坂根が前方を注意しながら走行すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠ったという過失とが競合して起きたものと認められる。右衝突に関する木下と坂根の過失割合は五対五の関係にあるとするのが相当である。

右認定にかかる事故態様によれば、安部の加害行為と坂根の加害行為によるワールドトランス及び木下の損害惹起については、七一九条一項後段を類推し、事実的因果関係の存在が推定されるものとすべきであるが、この種の類型の共同不法行為については関係者による事実的因果関係の不存在による免責あるいは損害発生に寄与した割合如何による寄与度減額の立証を許すものと解するのが相当である。そして、右事故態様に照らすと、ワールドトランスの損害及び木下の損害のいずれについても、安部の寄与度が八、坂根の寄与度が二の関係にあるものと認められる(日本道路公団に生じた損害についても同様である。)。

二  争点2について(木下の損害)

1  損害額(過失相殺前)

木下は、本件事故によって、治療費一万五五四〇円を要したものと認められる。

2  損害額(寄与度減額後)

前記の次第で、三紀運輸及び安部の負担額は一万二四三二円、ナンコー及び坂根の負担額は三一〇八円となる。

3  損害額(過失相殺後)

前記の次第で、木下の過失割合は、いずれの関係でも五割であるから、過失相殺後の損害額は、三紀運輸及び安部については六二一六円、ナンコー及び坂根については一五五四円となる。

三  争点3について(ワールドトランスの損害等)

1  損害額(過失相殺前)

(一) 修理費 二七五万円

ワールドトランス車両の車両損害は、時価額二七五万円であると認められる(乙八、丙二)。

(二) レッカー代 一五万六九二三円

ワールドトランス車両のレッカー代金として、標記金額を要したものと認められる(甲四)。

(三) 積荷損害 一三万九一三五円

ワールドトランスは、積荷損害として標記金額の損害を被ったものと認められる(弁論の全趣旨、甲五1、2)。

(四) 検品手間代 三万七八〇〇円

ワールドトランスは、検品手間代として標記金額の損害を被ったものと認められる(弁論の全趣旨、甲六)。

(五) 不良品引取運賃 一万五七五〇円

ワールドトランスは、不良品引取運賃として標記金額の損害を被ったものと認められる(弁論の全趣旨、甲六)。

(六) 休車損害 四〇万円

ワールドトランス車両の休車期間は、本件事故後の四〇日間の限度で認められる(木下、弁論の全趣旨)。

ワールドトランス車両の一日あたりの休車損害は、売上額等を参考にすると、一万円の限度で認めることができる。

したがって、休車損害は四〇万円の限度で認められる。

(七) 日本道路公団に対する支払 一〇万円

ワールドトランスは、平成一一年六月三日、日本道路公団に生じた損害のうちの一〇万円を同公団に支払ったものと認められる(前記争いのない事実等、甲八1ないし4、一〇、弁論の全趣旨)。

2  損害額(寄与度減額後)

右1の損害額の合計は三五九万九六〇八円であるところ、前記の次第で、三紀運輸及び安部の負担額は二八七万九六八六円(一円未満切捨て)、ナンコー及び坂根の負担額は七一万九九二一円(一円未満切捨て)となる。

3  損害額(過失相殺後)

前記の次第で、木下の過失割合は、いずれの関係でも五割であるから、過失相殺後の損害額は、三紀運輸及び安部については一四三万九八四三円(一円未満切捨て)となる。なお、このうち四万円(日本道路公団に対する支払額一〇万円についての寄与度減額後及び過失相殺後の金額に相当するもの)に関する遅延損害金の起算日は、平成一一年六月四日である。同様に、ナンコー及び坂根については三五万九九六〇円(一円未満切捨て)となる。なお、このうち一万円(日本道路公団に対する支払額一〇万円についての寄与度減額後及び過失相殺後の金額に相当するもの)に関する遅延損害金の起算日は、平成一一年六月四日である。

四  安田火災の保険代位(日本道路公団に生じた損害について)

1  損害額(寄与度減額後)

安田火災は、ワールドトランスとの間の自動車保険契約に基づき、平成一一年四月二八日、本件事故によって日本道路公団に生じた損害のうちの二〇万一四六一円を同公団に支払ったところ(前記争いのない事実等)、前記の次第で、三紀運輸及び安部の負担額は一六万一一六八円(一円未満切捨て)、ナンコー及び坂根の負担額は四万〇二九二円(一円未満切捨て)となる。

2  損害額(過失相殺後)

前記の次第で、木下の過失割合は、いずれの関係でも五割であるから、過失相殺後の損害額は、三紀運輸及び安部については八万〇五八四円、ナンコー及び坂根については二万〇一四六円となる。

五  争点4について(三紀ラインの損害)

1  損害額(過失相殺前)

(一) 修理費 三一万八一五〇円

三紀ラインは、三紀車両の修理費として標記損害を被ったものと認められる(乙五)。

(二) 休車損害 一〇万四〇〇〇円

三紀車両の休車期間は、本件事故後の八日間の限度で認められる(乙六、弁論の全趣旨)。

三紀車両の一日あたりの休車損害は、売上額等を参考にすると、一万三〇〇〇円の限度で認めることができる。

したがって、休車損害は一〇万四〇〇〇円の限度で認められる。

2  損害額(過失相殺後)

右1の損害額の合計は四二万二一五〇円であるところ、前記の次第で、安部の過失割合は、木下との関係で五割であるから、過失相殺後の損害額は二一万一〇七五円となる。

3  弁護士費用 一万円

相手方に負担させるべき弁護士費用は、一万円が相当である。

4  損害額(弁護士費用加算後)

過失相殺後の損害額に弁護士費用を加算すると、二二万一〇七五円となる。

六  結論

以上の次第で、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

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